経営者としての生成AIとの向き合い方

生成AIは、超優秀な部下である

生成AIと向き合う上で最も重要なのは、その位置づけをどのように捉えるかです。私は、生成AIを「超優秀な部下」と位置づけることをお勧めします。

この「部下」は、経営者が悩んでいることに対してアイデアを出してくれますし、指示したことは迅速かつ正確に実行してくれます。多くの場合、経営者自身よりも技術的な知識を持ち合わせており、特定の分野では専門家レベルの回答を提供することができます。

ここで重要なのは、生成AIという「部下」をいかに使いこなすかが、今後の経営において大きなポイントになるということです。使いこなせる経営者と、そうでない経営者の間には、次第に大きな差が生まれていくでしょう。

優秀な上司になる必要がある

生成AIは優秀な部下である一方で、適切な指示がないと期待通りの結果を返してくれません。これは人間の部下と同じです。つまり、生成AIを活用するためには、経営者自身が「優秀な上司」になる必要があります。

優秀な上司とは、目的を明確にし、5W1H（いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように）をしっかりと伝えられる人です。生成AIに指示を出す際も、同様に具体的で明確な指示を出すことが重要です。

また、生成AIは膨大な情報を処理できますが、最終的な判断は人間の役割です。AIが提案するアイデアや情報を基に、経営者自身が責任を持って意思決定を行うという姿勢が求められます。

ここ１～２年は、１つのツールだけ使い続けることがおすすめ

「どのAIツールを使えばいいのか？」という質問をよく受けますが、私の答えは「どれでもいい」です。自分にとって使いやすいと感じるツールを選び、それを継続的に使うことが重要です。

できれば1つは有料のツールを導入することをお勧めします。無料版と比べて、できることの幅や処理能力が全く異なるからです。経営判断のサポートツールとしてわずかな投資で大きなリターンが期待できます。

現在、ChatGPT、Gemini、Grok、Claudeなど、多くのAIツールが競争状態にあり、日々進化しています。「どのツールが最も優れているか」という問いに対する明確な答えはありません。あえて言えばChatGPTが市場をリードしている状況ですが、各ツールには一長一短があります。

情報過多の時代において、次々と登場する新しいツールの情報に振り回されないようにすることが大切です。特に最初の1～2年は、1つのツールに集中して使いこなすスキルを磨くことをお勧めします。

生成AIの使い方に慣れておくのは超重要

生成AIへの指示の出し方には独自のコツがあります。明確かつ具体的な指示を与えることで、より質の高い回答を得ることができますが、これには練習が必要です。

また、生成AIにはできることとできないことがはっきりとあります。例えば、最新の情報や特定の専門分野に関しては不正確な情報を出力することがあります。こうした特性や限界を理解した上で活用することが重要です。

今から生成AIの使い方に慣れておくことは、将来的な競争力を維持するために非常に重要です。AIツールは今後ますます私たちの業務に深く組み込まれていくでしょう。

人間の部下にも同じことが言える

興味深いことに、生成AIに対する適切な指示の出し方は、人間の部下へのマネジメントにも通じるものがあります。目的を明確にし、具体的な指示を与え、適切なフィードバックを行うというサイクルは、人材育成においても重要です。

生成AIという新しい「部下」との関わり方を学ぶことで、人間の部下に対するマネジメントスキルも向上する可能性があります。優秀な上司であり続けるという姿勢が、組織全体のパフォーマンスを高める鍵となるでしょう。

会社に一人はIT技術者を抱えておくのが肝要

外部のIT企業に依頼する場合、自社の業務や課題を完全に理解してもらうことは難しいものです。また、AI時代の到来により、従来のシステム開発やIT導入の方法論も大きく変わりつつあります。

このような変革期において、社内に少なくとも一人はITに詳しく、AIを使いこなせる人材を置いておくことが重要です。この人材が外部のIT企業とのコミュニケーションを担当したり、社内のAI活用を推進したりすることで、DX推進の効率が大幅に向上します。

理想的には、簡単なシステム開発や業務自動化を社内で完結できる体制を整えることをお勧めします。生成AIを活用することで、プログラミングの経験が少ない人でも、基本的なアプリケーション開発やプロセス自動化が可能になってきています。