株式会社エムズプロジェクト

バックオフィス業務効率化による人材不足対策実績

業務改善 組織改革 バックオフィス
クライアント:小売サービス業

本実績は、成長期にある中小企業において、バックオフィスサービスとルールの整備を行うことで、人手不足を解決した取り組みです。
各現場で業務の巻き取り、ルーチンワークの外部委託化、社内ルールの整備、効果的なITツール導入、管理部門の体制強化という段階的アプローチにより、事業拡大を支える管理基盤を確立しました。

同様の課題でお悩みですか?

本実績は、業務拡大期の企業において、管理部門で行った一連の業務効率化のまとめとなります。
個別の課題に関しては、別途まとめておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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背景・課題

急成長する企業において、事業拡大に伴う管理業務が増大し、以下の課題に直面していました:

主な課題

  • 不明確な業務分担と責任範囲: 「誰がやるか」が曖昧で、"業務のポテンヒット"が多発
  • 社内ルールがあいまい: 事業拡大に伴い、独自ルールが発生し、誰に聞けばいいかがわからない状況に
  • 分散したバックオフィス業務: 各部門で独自に管理業務を行い、非効率かつ品質にばらつき
  • 属人化した業務プロセス: 特定の担当者しか知らない業務があり、システムの整備に難航
  • 会議の非効率性: 長時間・低効率な会議が社員の時間を浪費

特に、IPO準備に向けた内部統制強化が必要な中、管理体制の確立は急務な状況でした。抜本的な組織改革が必要となっていました。

実践的アプローチ

業務過多による社内の疲弊を根本から解決するため、ボトムアップとトップダウンの両面からアプローチしました:

1. ボトムアップとトップダウンの統合アプローチ

ボトムアップ面

  • 役割分担が明確でない業務を管理部門で一旦集約・整理
  • 業務を定型化した後、適切な部門に再配分する「集約→整理→分配」サイクル

トップダウン面

  • IPOの流れを受けた全社的な規程整備と業務フロー標準化
  • 経営視点での管理部門の役割再定義
  • 将来的な組織拡大を見据えた基盤構築

2. 現場視点での業務改善アプローチ

現場理解を基盤とした改善

  • 各部門の業務実態の詳細把握
  • 現場社員とのコミュニケーションを通じた課題発掘
  • 「現場が本当に必要としていること」を起点とした改善
業務集約・定型化・再分配プロセス
図1:業務集約・定型化・再分配プロセス

段階的・実践的改善

  • 小さな成功体験の積み重ねによる信頼構築
  • 即効性のある改善から着手し、段階的に拡大
  • 現場フィードバックを取り入れた継続的な調整

3. 現実的なIT導入アプローチ

各部門の実情と全社最適を両立させる段階的なIT導入を実施:

  1. 第1段階: ヘルプデスク設置とIT資産管理(PC-LCM)の確立による基盤整備、外部委託化
  2. 第2段階: グループウェア活用による情報共有の促進
  3. 第3段階: Microsoft 365導入による基盤統一と業務高度化

この実践的アプローチにより、理想論に走らず、現場の実態に即した実効性の高い改革を実現しました。

実施内容

1. 組織再構築フェーズ

管理業務の棚卸しと再配分

  • 全社の管理業務を一覧化し、必要性・効率性の観点から評価
  • 管理部門への業務集約と、現場に残すべき業務の切り分け
  • 「管理の集中と実行の分散」原則による業務配分の最適化

組織構造の再設計

  • 管理部門内の職務定義と責任範囲の明確化
  • 専門スキルと業務特性に基づくチーム編成
  • 適切な権限委譲による現場での判断促進

社内規定・ルールの整備

  • IPO準備を見据えた必要十分な社内規程の整備
  • 現場の実態に合わせた運用ルールの策定
  • ルールの背景・目的も含めた丁寧な説明と浸透活動

2. 業務プロセス改革フェーズ

社内ヘルプデスクの設計と設置

  • IT・総務関連の相談窓口の一元化
  • よくある質問集の整備と社内ポータルでの公開
  • 問い合わせ内容の分析による改善サイクルの確立

会議体の最適化

  • 会議の目的と権限の明確化
  • アジェンダの作成の徹底、事前資料配布と議事録作成の徹底
  • ファシリテーションの実践と会議進行の効率化

職務権限体系の確立と稟議システム導入

  • 明確な職務権限表の作成と社内浸透
  • 「現場で判断できること」と「経営層の承認が必要なこと」の明確な仕分け
  • 権限体系に基づいた稟議ワークフローシステムの導入

運用マニュアルの体系的整備

  • 実務に即した業務マニュアルの作成
  • 実際の業務画面を多用した直感的な操作説明
  • 新入社員のオンボーディングに活用できる教育資料の整備

3. IT基盤強化フェーズ

ヘルプデスク機能の設置

  • IT・総務関連の問い合わせ窓口一元化
  • リモートサポート体制の構築
  • 問い合わせ傾向の分析による予防的対策の実施
ヘルプデスクとPC-LCMの整備による一元化
図2:ヘルプデスクとPC-LCMの整備による一元化

IT資産管理の確立

  • PCや備品の管理体制の構築
  • 調達・配布・回収のプロセス標準化
  • IT資産の有効活用とコスト適正化
  • 業務を外部委託化することで、社員の作業工数を削減し、空いたリソースを新たな業務に充当
業務の外部委託化と管理部門の拡張
図3:業務の外部委託化と管理部門の拡張

コミュニケーションツールの刷新

  • 非公式コミュニケーション(LINE等)から脱却
  • Microsoft Teams導入による公式コミュニケーションの一元化
  • 用途別チャネル設計と活用ガイドラインの策定

クラウド環境の戦略的設計

  • Microsoft 365環境への段階的移行
  • アクセス権限の階層設計と情報セキュリティ強化
  • ファイル共有と協働作業環境の整備
管理部門による部門間調整とファシリテーション
図4:管理部門による部門間調整とファシリテーション

定性的成果

組織面の改善

管理部門の価値向上

  • 「面倒な手続きを行う部門」から「業務をスムーズにする部門」へのイメージ転換
  • 経営判断をサポートする情報提供機能の強化
  • 現場と協働したビジネス課題解決の推進

業務の属人化からの脱却

  • 標準化された業務プロセスによる引継ぎ・代替の円滑化
  • チーム制導入による知識・スキルの共有促進
  • 「個人の記憶」から「組織の記録」への転換

管理職の役割転換

  • 日常的な承認作業から戦略的判断への時間シフト
  • チーム育成とナレッジ共有への注力
  • 部門間連携の促進役としての機能強化

業務プロセス面の改善

適切な権限委譲と判断基準の確立

  • 職務権限の明確化による「誰が何を決められるか」の浸透
  • 現場判断と経営判断の適切な線引きによる意思決定の適正化
  • 権限委譲による現場の自律性向上と経営層の重要案件への集中

情報アクセスの円滑化

  • 必要な情報への迅速なアクセス環境の整備
  • 部門間の情報共有促進
  • 決定事項や方針の全社共有の迅速化

ヘルプデスク機能の効果

  • 問い合わせ先が明確になり、現場の混乱解消
  • 「隣の人に聞く」による業務中断の減少
  • IT関連トラブルの解決時間短縮

ビジネスインパクト

管理部門の人員増加抑制

  • 業務効率化により、事業規模拡大に対して最小限の人員増加で対応
  • 新規採用コストと教育コストの抑制

現場生産性の向上

  • 管理業務負担軽減による本来業務への集中度向上
  • 意思決定スピード向上による機会損失の減少
  • 明確なルールによる判断の迷いの減少

内部統制体制の強化

  • IPO準備に必要な内部統制の効率的な構築
  • コンプライアンス強化と業務効率のバランス実現
  • 監査対応の効率化と証跡管理の徹底

危機対応力の向上

  • コロナ禍におけるリモートワーク即応体制の実現
  • BCP対策としての業務継続性の強化
  • クラウドベースの業務環境による場所に依存しない働き方の実現

実践から得られた知見と成功要因

本事例から抽出された、バックオフィス改革成功の実践的要因は以下の通りです:

1. 「集約と分散の最適バランス」の原則

バックオフィス業務の改革においては、単純な集約化や分散化ではなく、業務の性質に応じた最適な配置が重要です。実際に以下のような分類で業務配置を行いました:

  • 集約すべき業務: 専門性が高く、一元管理が効率的な業務(経理処理、契約管理など)
  • 分散すべき業務: 現場判断が重要で、迅速な対応が必要な業務(日常的な稟議承認など)
  • 集約→整理→分配すべき業務: 各部門で散発的に発生し始めている業務を一旦集約して標準化した後、適切な形で再配分する業務

2. 「自助・共助・他助」の階層的支援モデル

限られたヘルプデスク人員で最大の支援効果を得るため、問題解決の階層化を図りました:

  • 自助(セルフヘルプ): 社内ポータルのFAQやナレッジベースで自己解決できる環境の整備
  • 共助(ピアサポート): 部門内での相互支援体制の構築と推奨
  • 他助(専門サポート): 自助・共助で解決できない専門的な問題のみをヘルプデスクが対応

この階層的アプローチにより、少ない専門スタッフで多くの問題解決をサポートできる体制を実現しました。

3. 「現場視点のボトムアップ改革」の実践

各部門の実態を深く理解した上で改革を進めるアプローチを採用しました:

  • 現場との対話重視: 形式的なヒアリングではなく、日常的な対話から真のニーズを把握
  • 問題の根本原因特定: 表面的な症状ではなく、根本的な課題を特定する分析
  • 実践的な解決策設計: 理想論ではなく、現場で実行可能で効果的な解決策の設計

このアプローチにより、現場の実態に即した実効性の高い改革を実現し、現場からの支持と協力を得ることができました。

4. 「段階的な変革」の手法

変革の実施においては、一度に大規模な変更を行うのではなく、段階的かつ着実に進めるアプローチを採用しました:

  • 即効性のある改善から着手: 短期間で効果が見える取り組みから開始し、信頼を構築
  • 変革の段階的拡大: 成功体験を基に段階的に改革範囲を拡大
  • 現場フィードバックの反映: 実施後の反応を丁寧に収集し、次のステップに反映

このアプローチにより、変革への抵抗を最小化しながら、着実に改革を進めることができました。

まとめ

本実績は、IPO準備という経営課題と日常業務の効率化という現場課題を同時に解決するためのバックオフィス改革の実践例です。トップダウンとボトムアップの両面からのアプローチにより、組織全体の抜本的な改革を実現しました。

特に重要だったのは、単なるITツール導入や表面的な業務改善ではなく、組織の在り方や業務の本質的な価値を問い直した点です。明確な職務権限の確立、現場と管理部門の適切な業務分担、社内ヘルプデスクの設置などの取り組みは、単に効率化を図るだけでなく、組織文化そのものを変革することにつながりました。

この取り組みは、少子高齢化社会における「人材不足時代を勝ち抜く組織づくり」の実践モデルとして、多くの中小企業に応用可能です。単に人を増やすのではなく、「最小限のリソースで最大の成果を出せる」組織設計と業務プロセスの確立が、これからの企業成長の鍵となるでしょう。