株式会社エムズプロジェクト

生成AIを活用したコーポレートサイト構築の内製化

AI活用
クライアント:株式会社エムズプロジェクト(自社事例)
項目 詳細
クライアント 株式会社エムズプロジェクト(自社事例)
業種 ITコンサルティング
課題 エンジニアを抱えない環境でのコーポレートサイト制作
ソリューション 生成AI(Claude)を活用したノーコード/ローコード開発
開発期間 約3週間(実働15日、1日8時間換算)
主要成果 エンジニア不在でもある程度の品質のコーポレートサイトを構築
外注コスト比で約70%のコスト削減

課題(Before)

当社は、中小企業向けのIT戦略・DX支援サービスを提供するコンサルティング会社です。事業開始に伴い、会社の信頼性向上とサービス訴求のためのコーポレートサイトリニューアルが必要となりました。

主な課題

  • 社内にWebサイト開発を担当できるエンジニアがいない
  • Web制作会社への外注はコスト面で大きな負担となる
  • 完成後も自社で容易に更新・保守できる仕組みが必要

通常であれば、同規模・同機能のコーポレートサイト開発をWeb制作会社に依頼すると、200〜300万円程度のコストがかかると想定されました。この費用は新興企業である当社にとって大きな負担となるため、代替手段の検討が必要でした。

ソリューション

これらの課題を解決するため、最新の生成AI技術である「Claude」を活用した内製化アプローチを採用しました。

ソリューションの特長

  1. 生成AIによるコード生成

    HTMLやCSS、JavaScriptなどのWebサイト構築に必要なコードを生成AI(Claude)に生成させる

  2. 段階的な開発プロセス

    要件定義→デザイン方針→コード生成→テスト・統合の流れで進行

  3. 反復的な改善

    生成されたコードをレビューし、フィードバックを与えながら改善

  4. 保守性の高い設計

    将来の更新や機能追加を見据えた構造設計

このアプローチにより、専門的なWeb開発知識がなくても、高品質なコーポレートサイトを内製することが可能になりました。

AIと人間の役割分担図
図1:AIと人間の役割分担図

実施内容

1. 要件定義と計画立案

まず、コーポレートサイトに必要な機能やページ構成を詳細に検討し、要件定義書を作成しました。この段階から生成AIを活用し、業界標準の要件定義フォーマットの提案や、必要な項目の洗い出しを支援してもらいました。

作成された主な要件定義ドキュメント

  • コーポレートサイト要件定義書(全体構造、ページ構成、機能要件など)
  • コラムページ要件定義書(ブログ機能の詳細仕様)
  • アクセス解析設定手順書

2. フロントエンド開発

サイトのフロントエンド(見た目と操作性)の開発では、生成AIに以下の作業を支援してもらいました:

  • HTML構造の設計と生成
  • レスポンシブデザイン対応のCSS作成
  • 動的機能を実現するJavaScript実装
  • 共通パーツ(ヘッダー・フッターなど)の設計

特に、HTML/CSS/JavaScriptの相互連携や最適なコード記述方法について、AIの専門的知見を活用できた点が大きなメリットでした。

3. バックエンド基盤の構築

限定的ではありますが、サイトの基本的なバックエンド機構も実装しました:

  • PHP includeを活用した共通パーツの管理
  • JSON形式でのデータ管理(コラム記事、サービス情報など)
  • フォーム連携(Google Formsとの統合)

これにより、専門的なバックエンド開発知識がなくても、拡張性と保守性を備えたサイト構造を実現しました。

4. 特殊ページ・コンテンツの実装

標準的なページに加え、マーケティング効果を高めるための特殊コンテンツも実装:

  • ランディングページ(「会社のパソコン室」サービス向け)
  • エイプリルフール企画ページ(Windows 95デザイン)
  • コラム管理システム

これらの特殊ページも、生成AIによるコード提案をベースに効率的に実装できました。

5. SEO・アクセス解析の導入

Webサイトのパフォーマンス向上のための施策も実施:

  • 検索エンジン最適化(SEO)のためのメタタグ設定
  • Google Analytics 4の導入
  • 構造化データ(JSON-LD)の実装

これらの専門的な設定も、生成AIのガイダンスに従って正確に実装できました。

成果(After)

1. 完成したWebサイトの特長

  • 多ページ構成のフル機能コーポレートサイト
  • レスポンシブデザイン(PC/タブレット/スマホ対応)
  • コラム(ブログ)システム
  • サービス紹介・実績ページ
  • 問い合わせ機能と専用ランディングページ
  • SEO対応とアクセス解析機能

2. コスト削減効果

外注と内製のコスト比較
図2:外注と内製のコスト比較

同等規模・機能のWebサイト制作を外注した場合と比較したコスト削減効果:

項目 外注コスト 内製コスト 削減額 削減率
要件定義 約30万円 約8万円
(10時間×8,000円)
約22万円 73%
デザイン 約50万円 約12万円
(15時間×8,000円)
約38万円 76%
フロントエンド開発 約80万円 約32万円
(40時間×8,000円)
約48万円 60%
バックエンド開発 約60万円 約24万円
(30時間×8,000円)
約36万円 60%
特殊ページ開発 約40万円 約16万円
(20時間×8,000円)
約24万円 60%
テスト・修正 約20万円 約4万円
(5時間×8,000円)
約16万円 80%
合計 約280万円 約96万円 約184万円 約66%

※内製コストは、開発担当者の時給8,000円と仮定して算出
※外注コストは、Web制作会社の一般的な見積もり相場から算出
※AI利用料金(クレジット料等)は比較的少額のため省略

66% コスト削減率 外注との比較
184万円 総削減額 約280万円 → 約96万円
25% 開発期間短縮 4週間 → 3週間

3. 時間効率化の効果

生成AIの活用により、従来のWeb開発と比較して大幅な時間効率化も実現しました:

  • コードのボイラープレート(定型部分)生成の自動化
  • エラー修正や最適化提案によるデバッグ時間の短縮
  • 類似コンポーネントの横展開が容易

これらの効率化により、当初予定していた4週間の開発期間を3週間に短縮できました。

生成AIを活用した開発の特長

本プロジェクトから得られた、生成AIを活用したWeb開発の主な特長は以下の通りです:

1. エンジニアスキルの補完

専門的なWeb開発知識がなくても、AIがコードの生成や構造設計を支援することで、高品質な開発が可能になりました。特に以下の点でスキル補完が効果的でした:

  • 適切なHTMLセマンティクス(意味的構造)の提案
  • レスポンシブデザインのためのCSS設計
  • JavaScript機能実装の最適化
  • 保守性を考慮したコード構造の提案

2. 反復的改善プロセスの効率化

生成AIは質問に対して即座に回答し、コードを生成するため、従来の開発と比較して反復サイクルが大幅に短縮されました:

  1. 要件を伝える
  2. AIがコードを生成
  3. 結果をレビュー
  4. フィードバックを与える
  5. AIが改善版を生成

このサイクルを素早く繰り返すことで、効率的な開発が実現しました。

生成AIを用いた開発プロセスフロー図
図3:生成AIを用いた開発プロセスフロー図

3. 知識の統合と最新動向への対応

生成AIは多様な知識を統合し、最新のWeb開発ベストプラクティスを提案してくれました:

  • 最新のHTML5/CSS3機能の活用提案
  • JavaScript開発の最適アプローチ
  • SEO対策の最新動向
  • アクセシビリティ対応の推奨事項

これにより、個人の知識や経験の限界を超えた、高品質な開発が可能になりました。

導入ポイント

本事例から得られた、生成AIを活用した内製開発成功のポイントは以下の通りです:

1. 明確な要件定義

AIに適切な指示を出すためには、自社のニーズと要件を明確に定義することが重要です。曖昧な指示ではAIも曖昧な結果しか返せません。

2. 段階的なアプローチ

一度にすべてを実装しようとせず、基本構造→主要ページ→特殊機能といった段階的なアプローチが効果的でした。各段階でAIとの対話を重ね、徐々に完成度を高めていきました。

3. 継続的なフィードバック

AIが生成したコードを実際に動かし、問題点や改善点を具体的にフィードバックすることで、徐々に理想のサイトに近づけていくプロセスが重要でした。

4. 基本知識の習得

HTML/CSS/JavaScriptの基本構造を理解していると、AIとのコミュニケーションがスムーズになります。完全な知識がなくても、基本的な概念を押さえておくことで、生成されたコードの評価や修正指示がしやすくなります。

今後の展望

本事例を通じて、生成AIを活用したWeb開発の大きな可能性を実感しました。今後の展望としては:

  • デザイナーを交えた、ブランディング重視の開発

    今回のサイト制作は、AI活用の試みとしての意味合いが強かったため、本格的なコーポレートサイトの構築には、デザイナーの観点での調整は必要不可欠と考えます。
    より品質の高いコーポレートサイトを構築するためには、Webデザイナーを交えた設計が必要と考えています。

  • コンテンツ管理システム(CMS)の内製化

    現在はJSONベースの簡易的なコンテンツ管理ですが、将来的にはPHP+MySQLを活用した本格的なCMSの構築も検討

  • AIを活用した継続的改善

    アクセス解析データを基に、AIに改善提案を求める体制の構築
    ユーザー行動分析と連動したコンテンツ最適化

  • ノーコード/ローコード開発体制の強化

    生成AIを中核としたWebシステム開発プロセスの確立
    非エンジニアスタッフのAI活用スキル向上

を見込んでいます。